釣行日 場所

2003年6月4日 千代川

6月の岩魚

田中長良画「イワナ」
 

 

毎年6月になると岩魚が釣りたくなる。岩魚に会いたいとか、岩魚を食いたいのではない。岩魚を釣りたいのである。

餌釣りの頃、よく落ち込みの両サイドに川虫を落とし込んで岩魚を狙っていた。「コツコツ」とくると、一瞬、竿を送ってから、軽く糸を張ってやる。すると「ゴンゴン」と来るので、すかさず合わせる。岩魚はアマゴやヤマメと違い、こうした聞き合わせがきくのである。

しかしここのポイントの岩魚は、毛鉤に出ることもあるが、やはり釣りにくい。そこで6月に入ると、夕方、瀬尻の緩やかな流れに出てきた岩魚を毛鉤で狙うのである。

6月4日、千代川。アマゴやヤマメは里川でもよいが、岩魚は大きな岩がゴロゴロして、落ち込みや淵が連続している方が住みやすいような気がする。しかし、兵庫・鳥取の川で、岩魚が釣れて、なおかつ毛鉤が振りやすい谷は少ない。

少し早く着いたのか、まだ陽が高い。ゆっくりと釣り仕度をして川に下りる。岩魚用に黒っぽい毛鉤を結んで振り出すが、さっぱり反応がない。これは時間待ちになる。

5時半を過ぎて、ようやく最初の1匹が掛かった。瀬に出た岩魚は勝負が早い。それも素直に毛鉤をくわえてくれる。こすからい出方はしない。大きな毛鉤でもよいし、大袈裟に毛鉤を躍らせてもよい。

「ほら餌ですよ」と毛鉤を流すと、「はいご馳走さん」とくわえてくれる。そして離さない。この「離さない」愚直さが、岩魚の岩魚たる所以である。

10回ほど出ただろうか。活かしビクの中には7匹の岩魚が泳いでいた。たんまに毛鉤を離す岩魚もいるみたいである。大きいのから家族分だけ残し、後は流れに戻した。手元には4匹の塩焼きサイズの岩魚が残った。6月になると、やはり岩魚が釣りたくなる。
 

取材:京都北山テンカラ会  田中 佳憲

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